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「言わぬが花」
楠田 喜熊・三春ご夫妻 株式会社雲仙きのこ本舗代表
「言わぬが花」楠田喜熊・三春ご夫妻株式会社雲仙きのこ本舗

 “きのこ”は、種を作らず胞子で殖える植物。日本では縄文時代の遺跡からも発掘されているそうですので、古くらからある食材なんですね。これまでは栄養価の無い物とされていましたが、最近では制癌効果があることが判ったと言います。まさに美味養生。

 お見合い結婚だそうですね。
「当時の社員さんの中に私の親戚がいまして、その人から話があったんです」と三春さん。
「うちの父と姉が、その頃この人の勤めていた職場を訪ねて行って気に入ったんです」
 喜熊さん自身が決めたのでは無いんですね。
「私は忙しいし、総て父に任せてましたから」
 三春さんは、それで良かったんですか。
「ええ。主人は明るい人でしたし、仕事が出来る人なら家庭も大切にしてくれると思いましたから」

 結婚して、お互いに思い違いをしていたなんてことはありませんか。
「奥さんは、強くなりましたよ」
「私は特に何も感じません。尊敬出来る人で良かったですね。そうで無かったから、例えばトイレのスリッパのまま外に出て来たりしたら幻滅でしょ。でも、尊敬する人なら許せますから」三春さんは、若い人たちへのメッセージを込めて、そう話します。
「とにかく、夫婦に大切なのはブレない考え方ですよ」
「そう。そして肯定的に生きるってことでしょうね」

 多忙だと、二人でのんびりする暇もありませんね。
「どちらも温泉が好きですからね、僅かな暇を見つけては雲仙に行くんです」微笑みながら喜熊さん。
「それも。車の中で仕事の話をして、宿に着いたらお互いに無言なんですけど。そのほうがのんびり出来ていいでしょ」三春さんも笑います。

 なるほど、“きのこ”作りのベテランですね。二人の愛情には“種も仕掛け”もないようですよ。
 ちなみに、皆さんは“きのこ”の花をご存知ですか。“子実体”と言いまして、私たちが口にする部分が、他の植物の花に相当するのだそうです。
 素敵な人をみれば、愛だの恋だのと口にしたくなりますが、本物の花は“きのこ”のようなものなのかもしれませんね。

「言わぬが花」楠田喜熊・三春ご夫妻株式会社雲仙きのこ本舗

2009年2月vol.52「よろしく先輩45

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「線路は続くよ・・・」
市川 森一・柴田 美保子ご夫妻 脚本家・女優

「線路は続くよ・・・」市川 森一・柴田 美保子ご夫妻 脚本家・女優

 JRの線路は総延長19881.6キロ。私鉄と合わせると約28000キロに及ぶと言います。全線を時速100キロで走っても、およそ12日間かかることになりますから、大変な距離なんですね。

 脚本家と女優さんですから、知り合ったのはやはり撮影現場なのですか。
「ええ。宝塚で撮った“マキちゃん日記”というテレビ・ドラマの仕事でした」美保子さんは、テレビの中と同じ白い笑顔で話します。
「ボクは近くの旅館に籠ってシナリオを書いてたんですが、撮影所に行った時に出会いましてね」森一さんも聞きなれた歯切れのいい口調です。
「主人は結構ひょうきん者なんですよ」
「彼女はね、女優さんだから美人なのは当たり前ですが、気立ての良い女性だなって印象でしたね」
 森一さんは冷静な表情のまま続けます。
「彼女は大阪住まいでボクは東京なんですが、ある日、偶然に阪急の宝塚線で一緒になりましてね。梅田駅を降りて、すぐそばの大阪駅まで送ってくれたんです。しかも、新大阪までの切符も買ってくれて」
 美保子さんの作戦だったんですか。
「いいえ、とんでもない。構内は広いし、切符を買う場所も判りにくいでしょうから・・・」
「ひと駅間だけですけど、気の利く女性だなと思いましたよ。新大阪で降りた時は、その切符を野球のウイニング・ボールみたいにずっと持っていたかったんですが、駅員さんに取り上げられましたからね」
 目の前の出来事のように、悔しそうな森一さん。
 わずかひと駅間の切符でも、愛する人から貰うと宇宙の果てまで行けるものなんですね。

 それから三年後に結婚。人目がありますから、思うようにデート出来なかったのではありませんか。
「特に気になるようなことはなかったですね。ときどきお茶でも飲みに行く程度でしたから」
「東京からの電話代が、当時の家賃と同じ7万円くらい掛かってましたけどね」
 どんな話題だったんですか。
「夫は、仕事の話ばかりしてましたよ」
「何とか彼女を逃さないように、いかにも仕事がたくさんあるように言ってましたね」
 そんな二人も、もう結婚35年を過ぎたそうです。
 そして今でも、毎朝起きたら笑顔で“おはよう”の挨拶を欠かさないのだとか。人生の片道切符で、レールのように並んで歩み続けているんですね・・・。
 そうだ、あの日の切符は、きっと神様が預かっているに違いありませんよ、森一さん。

2009年1月vol.51「よろしく先輩44

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「ピーナッツ同盟」
坂田 幸利・由紀美ご夫妻 看護専門学校・看護師
「ピーナッツ同盟」坂田 幸利・由紀美ご夫妻 看護専門学校・看護師

 枯れた花から、細長い紐状の子房柄(しぼうへい)が垂れ下がり、土に潜ります。そこで固い殻に守られて育つのが落花生。最近の研究では、渋皮はポリフェノールが含まれていて体に良く、殻は細かく砕いて室内に置いておけばホルムアルデヒドを吸収してくれるので、シックハウス症候群に効果があることが判明。小粒ですが無駄のない食べ物なんですね。

 二人は別の看護学校でしたが、共通の友人の紹介で知り合いました。幸利さんは優しい男性、由紀美さんは可愛い女性というのが互いの印象だったそうです。こうなりますと大恋愛劇場の開幕ですね。
「いいえ、ただの友達でしたよ」
「気心の知れた、仲良しかしら」
それではプロポーズの言葉とか、場所は・・・。
「いつの間にか自然に、そうなっていましたから」
これまた予想が外れましたよ。それでは結婚生活もごく平凡に過ごしてきたんですね。
「両方とも三交代の勤務ですから擦れ違いが多くて」
「特に、子供が出来てからは時間との戦いでしたね」
二人とも表情がこわばります。そして由紀美さんは目を潤ませました。
「子供は保育園に育ててもらったようなもの・・・」
なるほど、可愛い盛りの子供を預けての仕事ですからね。
 でも、同じ仕事ですから互いに理解があり、助け合って今日まで過ごして来られたのだそうです。
「何と言いますか、仲間同士みたいな夫婦です」
「一緒になって戦い、守り合うようなね」

「ただ、子供が病気の時は母親が側にいる方が良いだろうと、仕事を休ませたのは申し訳なかったね」
 幸利さんは神妙な目で由紀美さんを見詰めました。初めて口にする言葉なのです・・・。
 実は、そんな夫婦の苦労を、二人の男の子たちは見て育っていたんです。
「長男が二十歳の誕生日に“今までありがとう”と一泊二日の旅行をプレゼントしてくれましてね」幸利さんは唇を噛み締め、「子供に育てられたんですね、私たちは」由紀美さんは再び目を潤ませました。

 今は子供たちも大きくなり、幸利さんは看護学校の教師になりましたから、生活も少しずつ変化しているようです。花が枯れ落ちて地中で実を結ぶ“落花生”のように、固い絆の殻で守り守られる夫婦、家族。暖かな話を有難うございました。

「ピーナッツ同盟」坂田 幸利・由紀美ご夫妻 看護専門学校・看護師

2008年12月vol.50「よろしく先輩43

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「淡々たぬき」
堤 けんじ・由子ご夫妻 たぬき絵作家
「淡々たぬき」堤けんじ・由子ご夫妻 たぬき絵作家

 大正末期、ある狩猟家が“むじな”を二匹捕らえたが、ちょうどその時に“たぬき”の捕獲を禁じた狩猟法が制定され、これによって逮捕された。狩猟家の住む地域では“たぬき”と“むじな”は別の生き物だとされていたのに、当時の生物学では同一視されていたからでした。

お見合い結婚だそうですね。「新聞社の知人から話がありましてね・・・」けんじさんは、過去の事はあまり触れたくないのだそうで、照れています。
「その方の奥さんと私が、同じように動物好きで懇意にしてたんです。それで、言われるままに或るお寿司屋さんに行ったんですけど、それらしい人がいなくて困ってたら、カウンターの中に立っているのが相手だったんです」由子さんは笑います。
第一印象はどうでしたか。
「まあ、可愛かったですね」
「優しい人という感じでした」
 けんじさんは店がありますし、デートもままならなかったのではありませんか。
「当時、彼女はバス・ガイドをしてたんですが、観光客に混じってグラバー邸を一緒に歩きましたよ」それから五ヶ月で結婚。決め手はなんだったのでしょうか。
どちらも犬が好きでしたしね
私の理想は、動物好きで、お酒・煙草はほどほどで、ギャンブルをしない男性でしたから
 今は店をやめ、狸絵一筋だそうですが、生活の変化はありますか。「主人が店をしている間は、子供たちと一緒に食事をすることがほとんどできませんでしたから、可愛そうでしたけど、それがなくなりましたね」由子さんは母親の立場で話します。
「二人の会話は、犬を通してすることが多くなりましたけど」けんじさんは絵の作風とは違って頑固者なのだそうです。由子さんにこっそり尋ねましたら、けんじさんを動物に例えると“虎”なのだそうですよ。

 現在では学問上“たぬき“と“むじな”は異なる生物だとされています。
 それはさておき、この二人、こうして眺めていますと、愛情に関しては良い意味で“同じ穴のむじな”みたいですがね。

「淡々たぬき」堤けんじ・由子ご夫妻 たぬき絵作家

2008年11月vol.49「よろしく先輩42
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「よさこい よき恋」
山下 洋史・千代子ご夫妻 佐世保市在住
「よさこい よき恋」山下 洋史・千代子ご夫妻 佐世保市在住

 「初めて会ったのは、二十歳の時だったな」
 「そう、あなたが事故で足を骨折して入院して来たのよね。一目見て、素敵だなと思ったわ」
 「それは初めて聞くなあ。こっちも、小さくて可愛い看護師さんだなと、まあ、一目惚れだったけど」

「そのせいかしら、私が仕事の話をするのを、とても良く聞いてくれる、聞き上手だったのは」
「それに、お義父さんは、知る人ぞ知る大工の棟梁で、尊敬する人だったからな。娘さんに失礼があってもいけないだろうし」

「でも、それから五年経って結婚してみたら、何もしてくれない人だったじゃないの」
「そうだな、何もかも任せきりだったかも」
「“よさこい祭り”の衣装まで作らされてたわ」
「けど、そのお陰で一緒に参加するようになったじゃないか」
「衣装を作ってると感動が私にまで伝わってきたの。不思議なことがあるのね」
「しかも、子供たちまで巻き込んで来たよな」
「毎年六月ころから落ち着かなくなるから、自然に子供たちにも感動が伝わったのよね、きっと」
「今年で何回目になるかな、家族揃っての参加は」
「ええ・・・、四回目ね」
「子供たちもいつの間にか大きくなって来たな」
「もうひとりの大きな子供も、いつの間にか衣装作りを手伝ってくれるようになったしね」
「知らない間に、何もしない亭主を卒業してた訳だ」
「そう。“よさこい祭り”のお陰なのよ」

「結婚して二十年の間に、いろいろと変化して来たんだな」
変わってないのは、お互いに挨拶をするように心掛けていることね
そうだな、これは少しも変わってないな。夫婦・家族に限らず大切なことだから
「何もしないようだったけど、そうやって私や子供たちを引っ張って来てくれたのよね」

「そんなに大袈裟なことじゃないけど・・・。いや、むしろこっちのほうが感謝してるよ。いつも有り難う」
「それじゃ、今年も子供たちや地域の人達と頑張りましょうね」
「そう、これから先もずっと頑張ろうな」

「よさこい よき恋」山下 洋史・千代子ご夫妻 佐世保市在住

2008年10月vol.48「よろしく先輩41

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