二人は別の看護学校でしたが、共通の友人の紹介で知り合いました。幸利さんは優しい男性、由紀美さんは可愛い女性というのが互いの印象だったそうです。こうなりますと大恋愛劇場の開幕ですね。
「いいえ、ただの友達でしたよ」
「気心の知れた、仲良しかしら」
それではプロポーズの言葉とか、場所は・・・。
「いつの間にか自然に、そうなっていましたから」
これまた予想が外れましたよ。それでは結婚生活もごく平凡に過ごしてきたんですね。
「両方とも三交代の勤務ですから擦れ違いが多くて」
「特に、子供が出来てからは時間との戦いでしたね」
二人とも表情がこわばります。そして由紀美さんは目を潤ませました。
「子供は保育園に育ててもらったようなもの・・・」
なるほど、可愛い盛りの子供を預けての仕事ですからね。
でも、同じ仕事ですから互いに理解があり、助け合って今日まで過ごして来られたのだそうです。
「何と言いますか、仲間同士みたいな夫婦です」
「一緒になって戦い、守り合うようなね」
「ただ、子供が病気の時は母親が側にいる方が良いだろうと、仕事を休ませたのは申し訳なかったね」
幸利さんは神妙な目で由紀美さんを見詰めました。初めて口にする言葉なのです・・・。
実は、そんな夫婦の苦労を、二人の男の子たちは見て育っていたんです。
「長男が二十歳の誕生日に“今までありがとう”と一泊二日の旅行をプレゼントしてくれましてね」幸利さんは唇を噛み締め、「子供に育てられたんですね、私たちは」由紀美さんは再び目を潤ませました。